10000件
天然石を販売する店をもって13年になる。
ネットからはじめたこの店は、お客様の悩みを伺い、石を選びブレスレットを作成するという完全オーダースタイルをとってきた。
今も変わらずそうしている。
ネット販売を続けながら、カフェの一画に出店し、その後岡山市内に水曜、日曜だけの実店舗を構えた。
その間、のべ10000件を越す女性の心の叫びを聴いた。
対面よりネットのほうが、深刻な悩みが確実に多い。時間も人の眼も気にしなくて良い為、打ち明けやすいのだろうと思う。
こんなに便利でなにもかも合理的な世の中になって、女性にも豊かな時間や生活が与えられても良いだろうに実際は全くそうなっていない。
ストレスから心が疲れきってしまい、心を落ち着けるサプリメント、漢方薬、病院で処方される薬をあたりまえに服用している。
そうやって疲弊した心を後まわしにしつつ主婦業をこなし、パートで働き、子供を育てている。
または、毎日身繕いをして通勤し、どんよりとした人間関係の渦の中で生き残るのに必死にならなければいけない。
彼女たちは家族にも気持ちを吐露する事はないという。
『家族に言ったってどうにもならないから』
『誰に対しても1から説明してまで打ち明けようと思わない』
『家族や友人たちとの間に緊張感を持たせたくない』
彼女たちの心は四六時中ずっと休んでいないのだ。ずっと張り詰めている。
知らず知らずいっぱいいっぱいになる。
私はカウンセラーという別枠を持っているが、残念な事に未だ多くの人はカウンセリングには抵抗があるらしい。
よって私の店の注文フォー厶の備考欄は、彼女たちが本当に辛いと思っている事を打ち明ける場所になっている。
ここで良いのであればこれからもどんどんそうしてほしい。
そうやってこの店の店主に心の毒を出して、少しでもすっきりして日常に帰ってほしい。
店は生業ではあるのだがご縁あって知り合った人たちとは商売を超えた付き合いをずっとしてゆきたいと思っている。
生涯実際に会う事はなくても生きている限り疲れた心の受け皿になれるのであればほんとうに幸いだ。
心底そう思う。